本稿は、本案準拠法の決定における仲裁人の自治の法的および実務的側面について議論する。 この論文はブルガリアの法律および実務をもとに、その他の国の法律、主要な国際条約、 UNICITRAL規則およびモデル法、ICC規則との比較を行っている。命題は、仲裁人は実体法を決定する際に広範な自由を享受しているというものである。この自由は、主に、仲裁地、仲裁判断が準じた法律の国、仲裁判断の最終承認・執行が行われた場所の公序規則によって制限される。仲裁人は、仲裁地の抵触法の適用義務はなく、当事者によって選択された法律を適用しなければならない。当事者によって選択された法律がない場合、仲裁人は自らが選択した法律を適用する。この意味で、仲裁人は抵触法に訴えるか、実体規則を直接選定することができる。仲裁人は、法律の下で執行可能な仲裁判断を下さなければならないが、担保は提供せずともよい。国際案件を扱う場合、仲裁人は仲裁地の強行規則を尊重しなければならないが、外国の強行規則は一定の場合にのみ尊重すれば良い。
ブルガリア ・ソフィア大学法学部国際私法教授。投資紛争解決国際センター(ICSID)ブルガリア担当仲裁人および調停人。1993年〜2007年、CA/BCCI (Bulgarian Chamber of Commerce and Industry)(ブルガリア商工会議所)仲裁人。2008年より、リーガル・インターアクション・アライアンス国際仲裁裁判所所長(ブルガリア・ソフィア市)。国際商業会議所(ICC) 臨時仲裁人として3案件を担当。国際私法の様々な側面について、著書4冊と論文100本以上をブルガリア語と英語で発表している。
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