仲裁人の責任―裁判権免除vs 契約責任
pages 211 - 230
ABSTRACT:

仲裁人の責任の問題は、契約責任と司法特権という相反する優先事項の間で論じられる。仲裁人は、 紛争解決のために当事者によって雇用され報酬を受けるサービス提供者と、司法執行権限者というふたつの役割を担っている。したがって、一部の人々は、仲裁人の「準司法的」な立場により、仲裁人の免責を支持する議論を展開する一方で、その他の人々は、契約責任という概念に基づいてこのような免責を否定する。本稿はまず、様々な仲裁機関の規則と様々な国の法律に基づく仲裁人責任の現状の概観を示し、コモンローおよび民法の領域からこれを検討する。
 続いて、仲裁人の責任に関する独自の見解を展開する。これは、契約アプローチと仲裁人の「司法的機能」に基づくアプローチの両方を考慮するものである。著者は、仲裁人が仲裁判断に辿り着く際に犯し得る一般的な過失について、仲裁人の責任を免除することが求められていると考える。なぜならば、仲裁人の独立性を守る必要があるためである。しかしながら、意思決定プロセスの外では、そのようなものとして(また、故意の場合は)、 仲裁人の業務のサービス的性格により、過失行為については仲裁人側に無制限の責任が求められる。

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about the authors

Hogan Lovells法律事務所ミュンヘン事務所パートナー、同事務所ドイツ仲裁実務担当主任。国内外の仲裁および訴訟、代替的紛争解決を中心に実務を行っており、具体的には個別事業案件、エネルギー、M&A、保険および再保険、一般的な商関係から生じる紛争などを扱っている。ドイツ・ポーランド商工会議所仲裁裁判所所長。専門的な経験をもとに、しばしばポーランドその他の中・東欧諸国が関与する国際紛争で仲裁人や法廷弁護人を務める。

E-mail: karl.poernbacher@hoganlovells.com

ミュンヘンのHogan Lovells法律事務所仲裁チームシニアアソシエイト。制度的ルールおよび国内仲裁体制下における国際仲裁の分野で実務を行っている。

E-mail: inken.knief@hoganlovells.com